農林業の原発損害賠償の現行枠組みは、今年12月末までとなっています。東電がJAなどに示した来年1月以降の新たな農林業賠償の枠組み案が、本日の地元紙で報道されました。
報道によれば、これまで1ヶ月ごとに事故前との収益の差額を補てんしている現行の枠組みを、新しい枠組みでは3ヶ月単位に変更しようとしています。しかし、変更案では賠償額が減少することは必至です。
東電の賠償は、収益が減少した月は現行と同じ差額を賠償しますが、問題は収益が増額した月の分です。現行の1ヶ月単位の賠償は、収益が増加した月は賠償金を0としています。ところが、3ヶ月単位の合算となれば、収益が増えた月の増額分がそっくり差し引かれます(11/ 23付け福島民報新聞の表を参照)。
きょうは、地元の肥育農家を訪ねて意見を伺いました。「3ヶ月間の合算による新たな枠組になれば、頑張って収益を上げれば上げるほど賠償金が少なくなる仕組みだ。農家のやる気をそぐようなものだ」。「現行の1ヶ月単位の賠償金が、月遅れでも毎月入ってくるからなんとかやりくりできているのに、3ヶ月に一度、賠償額も減らされれば経営は苦しくなるばかり」と。
この方は、約160頭の牛を飼う肥育農家です。子牛を購入し、約20ヶ月(600日)肥育してから出荷します。「事故前の子牛の値段は従来より高く1頭あたり約60万円だったが、今は約80万円になっている。せめて、1頭50万円くらいに下がればいいが。一方、牛肉の値段は、事故前は1㎏あたり約1,500~2,000円だったが、現在は全国的に約2,200~2,900円へと上がっている。東電は、これを理由に賠償の枠組みを変え減額しようとしているが、今も福島県産牛は他県より安く買いたたかれている。賠償金を含めても、他県並みの収益に追いつけないでいるのが肥育農家の現状だ」とも。
さらに、基準単価についても、「事故前の3年間との差額ではなく、日々牛肉の相場が動く肥育農家にとっては直近の過去3年間との差額で減収分を補てんしてほしい」と述べています。
国は、復興期間を10年としていますがまだ7年目です。「現行の賠償の枠組みを、せめてあと3年程度継続してほしい」との農家の要求は当然です。
県内5つのJAなどでつくる農畜産物損害賠償対策協議会は、東電案を受け入れるかどうかを、12月22日に判断するとしているようですが、みんなで声を上げ、東電の減額変更案をはねかえていきましょう。